GX志向型住宅とは?北海道に適した省エネ・高性能住宅のすべて
目次
- GX志向型住宅とは
- GX(グリーントランスフォーメーション)の意味と背景
- 住宅業界におけるGX志向型住宅の位置づけ
- 北海道でGX志向型住宅が求められる理由
- GX志向型住宅の特徴と性能
- 北海道におけるGX志向型住宅の選び方
- GX志向型住宅に使える補助金と優遇制度
- よくある質問
GX志向型住宅とは
GX志向型住宅とは、グリーントランスフォーメーション(GX)の考え方を取り入れた次世代型の住宅です。GX志向型住宅は高い断熱性能に加え、エネルギー消費を抑えた設備と再生可能エネルギーの導入によってエネルギー消費量をゼロ以下にしていきます。新たな省エネ住宅の区分として注目を集めています。
GX(グリーントランスフォーメーション)の意味と背景
グリーントランスフォーメーション(GX)とは、環境負荷を減らしつつ、社会全体を持続可能な形へと転換する取り組みのことです。具体的には、CO2排出の削減、再生可能エネルギーの普及、資源の有効活用を柱としています。近年、地球温暖化が問題視される中、住宅業界においてもGXへの取り組みが強化されてきました。
日本政府はカーボンニュートラルの実現を目指し、2030年までに新築住宅の省エネ性についてZEH基準適合を義務化する方針を打ち出しています。建築物関係のCO2排出量は全体の37%を占めていることから住宅においてもGXへの取り組みが不可欠となり、ZEH基準を上回るGX志向型住宅の普及が進んでいるのです。
住宅業界におけるGX志向型住宅の位置づけ
住宅業界におけるGX志向型住宅は、「エネルギー消費量の最小化」「再生可能エネルギーの最大活用」「環境負荷の削減」の3つを柱に位置づけられています。特に北海道のような寒冷地では、暖房によるエネルギー消費量が多く、従来の住宅ではCO2排出量も増加しがちです。
GX志向型住宅では、高断熱化することで熱損失を抑え、エネルギー効率の良い設備を採用することで冷暖房効率を最大化します。さらに、再エネ発電設備を導入することで消費エネルギーを抑えます。結果として、住宅のライフサイクル全体でCO2排出量を大幅に削減し、環境に優しく、光熱費を抑えながら暮らすことができます。
このように、GX志向型住宅は環境配慮型住宅の最先端として位置づけられ、持続可能な未来へとつながる重要な役割を担っているのです。
北海道でGX志向型住宅が求められる理由
北海道でGX志向型住宅が求められる理由は、寒冷な気候により冬季の暖房に多くのエネルギーが消費されるからです。そのため、住宅の断熱性能やエネルギー効率の向上が生活コスト削減や環境保護の観点からも重要です。GX志向型住宅は、暖房費の削減だけではなく快適な住環境の実現とCO2排出量の低減に貢献します。
寒冷地特有のエネルギー消費問題とは
北海道の冬は長期間にわたって厳しい寒さが続き、11月頃から4月頃まで室内を暖かく保つための暖房エネルギーが他地域に比べて多く必要になります。従来の住宅では、断熱性能が不十分な場合、暖房で温めた熱が外に逃げやすく、エネルギーロスが多く発生します。
その結果、灯油やガスといった化石燃料の使用量が増加し、電気の使用量も増加するため家計の光熱費を圧迫するだけでなく、大量のCO2が排出されることになります。寒冷地のエネルギー消費問題は、地球環境にも家計にも大きな負担を与えているのです。また、近年では夏も暑く冷房を使用する期間が長くなっています。
GX志向型住宅では、高性能な断熱材や高効率設備を採用し、エネルギーロスを最小限に抑えることで、こうした問題を解決することが可能です。
GX住宅が実現する暖房費削減と環境負荷軽減
GX志向型住宅では、エネルギー効率を最大限に高めることで、暖房費の大幅な削減が実現します。具体的には、高断熱材や高性能サッシを採用し、室内の熱を逃がさない構造にすることで暖房効率を向上させます。これにより、暖房機器の稼働時間を短縮し、光熱費の節約につながります。
さらに、太陽光発電といった再生可能エネルギーを組み合わせることで、化石燃料の使用を減らし、CO2排出量を削減します。これにより、家計の負担軽減だけでなく、環境保護にも大きく貢献できるのです。
北海道の厳しい寒さにも耐えうるGX住宅は、住まい手にとって経済的なメリットだけでなく、次世代に向けた持続可能な社会づくりにも寄与しています。
北海道の住宅に求められる省エネ基準とGX住宅の役割
北海道では、住宅の省エネ基準が他地域よりも厳しく設定されています。これは寒冷地ならではの暖房エネルギー消費量の多さに対応するためです。現在、国が推進する「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」、さらに2025年から新築住宅では断熱等級4以上が義務付けられています。
GX志向型住宅は、より省エネ性を高めており、断熱等級6以上、再エネ設備を除いて省エネ基準よりも35%以上1次エネルギー消費量を削減する建物で、再生可能エネルギーを利用して100%以上(寒冷地や狭小地では75%以上)削減します。
GX志向型住宅の特徴と性能
北海道の気候に合わせた高断熱仕様
北海道の寒さを乗り越えるため、GX志向型住宅では高断熱性能が重視されます。高性能な断熱材の使用はもちろん、断熱材の厚みを増やし、トリプルサッシを採用することで、住宅全体の熱損失を最小限に抑えます。また、熱損失が大きい窓の数や面積を減らすことも一つの手段として挙げられます。
但し、断熱性能だけではなく気密性能にも注意が必要です。どれだけ断熱性能をよくしても隙間があると十分に断熱効果を発揮せず冷暖房効率も下がります。また、北海道では室内と室外の気温差が大きいため、気密性が低いと結露を引き起こす可能性が高くなります。
エネルギー効率を高める設備
GX志向型住宅では、再生可能エネルギーを積極的に活用してエネルギー効率を高めています。例えば、太陽光発電システムを設置し、自宅で発電を行うことで電力を自給自足できます。余った電力は蓄電池に貯めたり、電力会社に売電することも可能です。北海道の冬季でも、日照時間を最大限に活かして効率的に電力を確保します。
高効率な暖房・冷房設備(エアコン・エコキュートなど)
GX志向型住宅では、高効率な暖房・冷房設備の導入が欠かせません。特に、ヒートポンプ技術を使用したエアコンやエコキュートなどの省エネ設備が注目されています。
1. ヒートポンプ技術
ヒートポンプは、空気中の熱を集めて移動させる技術です。熱を圧縮・膨張させることで温めたり冷やしたりします。少ないエネルギーを効率的に冷暖房することが可能であり、身近な設備ではエアコンや給湯器、冷蔵庫や自動販売機が挙げられます。寒冷地仕様のヒートポンプは北海道の冬にも対応しており、低温でも高い暖房性能を発揮します。
2. エコキュート
エコキュートはヒートポンプを利用してお湯を沸かす給湯システムで、電力消費を抑えつつ効率的に給湯が行えます。オール電化住宅との相性も良く、GX住宅では必須と言える設備のひとつとなっています。
3. エアコン
エアコンは、冷房のみならず暖房でも使用されています。最近では、エアコン1台で家中を冷暖房する全館空調が注目されており、北海道のような寒冷地でも効果は実証済で、光熱費も大幅に削減できることがわかっています。
これらの設備を導入することで、GX志向型住宅は光熱費の大幅な削減を実現し、環境負荷も低減します。設備の選定や設置は北海道の気候に合わせた仕様で行うため、長期間にわたり快適かつ経済的な暮らしをサポートします。
北海道におけるGX志向型住宅の選び方
1. 業者選び
GX志向型住宅は、新たに始まった省エネ区分であるため、現時点で明確に対応しているか判別することは難しいです。但し、ある程度対応可能であるか見分けることは可能です。
- 断熱等級6以上を標準としている
- 太陽光発電の対応が可能
- オール電化を基本としている
2025年の住宅補助金の要件では、「断熱等級6以上」「再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率35%以上」「再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率100%以上(北海道は75%以上も可)」が要件に入っています。
従来から断熱等級6を標準としている場合は変更する必要がなく、太陽光発電も必要量備えることで3つのうち2つの要件をクリアすることができます。オール電化を基本としている場合、給湯器はエコキュート、暖房はヒートポンプ式の設備を利用している可能性が高いことから、再エネを除いた削減率35%以上も仕様変更によって達成できる可能性が高いです。そのため、目安として上記3つを基本として考えるのも良いでしょう。
2. コストについて
GX志向型住宅を採用する場合、各社によって費用が大きく変わります。標準仕様で省エネ性が高い住宅会社の場合、太陽光発電の価格が上乗せになる、もしくは標準より少し高くなる程度なため、発電容量や蓄電池の有無で変わりますが100~200万円前後でGX志向型住宅の要件を満たせる可能性が高いです。
一方、ZEH水準の省エネ性としている場合、断熱のグレードアップが必須となります。また、元々の仕様によって高効率な給湯・暖房設備に変更する必要があるため、太陽光発電も含めると300~500万円ほど高くなる場合もあります。
3. 間取りとデザイン
省エネ性を満たすために、間取りやデザインに制限が必要な建築会社もあります。大きな窓は熱の損失が大きくなり、吹き抜けを設置する場合は高効率な冷暖房設備が必要となります。元々省エネ住宅を得意としている会社の場合、間取りやデザインなどは柔軟に対応しつつも省エネ性を維持できる可能性が高いと言えます。
GX志向型住宅に使える補助金と優遇制度
GX志向型住宅を建てる際には、国や地方自治体の補助金や税制優遇制度が活用できます。これらの制度を上手に利用することで、建築コストを抑えつつ、高性能な住宅を手に入れることが可能です。
国や北海道の補助金制度一覧
GX志向型住宅の新築において、国や北海道が提供する補助金制度は大きな支えとなります。以下が主な補助金制度です。
1. 子育てグリーン住宅支援事業
対象者
全ての世帯
工事内容
注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入、賃貸住宅の新築
補助額
160万円/戸
対象となる住宅
- 断熱等性能等級「6以上」
- 再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率「35%以上」
- 再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」
※都市部狭小地等の場合に限っては再生可能エネルギー未導入(ZEH Oriented)も可、寒冷地等に限り削減率75%以上(Nearly ZEH)も可。
その他の条件
- 対象となる住戸の床面積は50㎡以上240㎡以下とする。
- 以下の住宅は、原則対象外。
① 「土砂災害特別警戒区域」に立地する住宅
② 「災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域又は地すべり防止区域と重複する区域に限る)」に立地する住宅
③ 「立地適正化計画区域内の居住誘導区域外」かつ「災害レッドゾーン(災害危険区域、地すべり防止区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域又は浸水被害防止区域)内」で建設されたもののうち、3戸以上の開発又は1戸若しくは2戸で規模1000㎡超の開発によるもので、市町村長の勧告に従わなかった旨の公表に係る住宅
④ 「市街化調整区域」かつ「土砂災害警戒区域又は浸水想定区域(洪水浸水想定区域又は高潮浸水想定区域における浸水想定高さ3m以上の区域に限る)」に該当する区域に立地する住宅
基本的に、高断熱化(断熱等級6以上)に加え、省エネ性の高い給湯・冷暖房設備等を導入することで住宅全体のエネルギー消費量を削減(35%以上)、さらに太陽光発電などの再エネ設備を導入することで創エネし、エネルギー消費量の削減量を100%以上にするイメージです。
税制優遇・住宅ローン控除について
GX志向型住宅の建築では、税制面の優遇措置や住宅ローン控除を活用することが可能です。但し、長期優良住宅や認定低炭素住宅などの認定、建設性能評価の取得などを別途受ける必要があります。
1. 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
- 概要:GX志向型住宅を含む省エネ性能が高い住宅を対象に、ローン残高に応じた税額控除が受けられます。
- 控除率:年末の住宅ローン残高の0.7%
- 控除期間:最長13年
- 借入限度額:4500万円
- 条件:長期優良住宅もしくは低炭素住宅の認定が必要。
2. 固定資産税の減税
- 概要:GX住宅のような高性能住宅では、固定資産税の軽減措置が適用されます。
- 軽減内容:固定資産税が5年間、2分の1に軽減されます。
- 条件:長期優良住宅の認定が必要。
3. 登録免許税の軽減
- 概要:省エネ性能が認定された住宅について、住宅登記時の登録免許税が軽減されます。
- 軽減内容:税率が標準の0.4%から0.1%に引き下げられます。
- 条件:長期優良住宅の認定が必要。
これらの税制優遇制度を利用することで、GX住宅の建築後も長期的に経済的なメリットを受けることが可能です。現時点では、GX志向型住宅が要件化されてはいないため、長期優良住宅や低炭素住宅など別途認定が必要になりますが、省エネ性をクリアしているため比較的容易にこれらの認定を受けられることがGX志向型住宅のメリットになります。
よくある質問
GX志向型住宅に関して多くの方が疑問に感じる点をQ&A形式でまとめました。基本的な知識から専門的なポイントまでわかりやすく解説します。
GX志向型住宅はいつから普及しているのですか?
GX志向型住宅は、2024年に新しく創設された省エネ住宅の区分です。2025年から始めてGX志向型住宅を対象とした補助事業が始まるため、今後普及されることが見込まれます。
子育てグリーン住宅支援事業はいつから利用できますか?
子育てグリーン住宅支援事業は、2025年に開始されます。この制度は、ZEH水準を超える省エネ住宅の建築費用を支援するものです。申請期間や詳細な条件は順次発表される予定のため、最新情報を確認することが重要です。
断熱等級とは何ですか?住宅にどう関係しますか?
断熱等級とは、住宅の断熱性能を評価するための基準です。等級が高いほど断熱性能が優れており、室内の温度を一定に保つ効果があります。
- 等級4:従来の省エネ基準(一般的な住宅性能)
- 等級5:ZEH水準の断熱性能
- 等級6:北海道の寒冷地にも対応する高断熱性能
- 等級7:最高水準で、エネルギー消費を極限まで抑えます
GX志向型住宅では、最低でも断熱等級6以上で、高い省エネ性能と快適な住環境を両立させます。
1次エネルギー消費量とは何を指しますか?
1次エネルギー消費量とは、冷暖房、給湯、照明、換気などの設備が消費するエネルギーを、原油や電力の発電前段階のエネルギー量として換算したものです。GX住宅では、この1次エネルギー消費量を削減することが求められ、再生可能エネルギーの導入や高効率設備の使用により、消費量を100%以上削減を達成することが可能です。
BEIとは何ですか?具体的な数値の意味を教えてください
BEI(Building Energy Index)は、建物のエネルギー消費効率を示す指標です。
- 基準値:BEI=1.0が基準値となり、それ以下の数値であれば省エネ性能が高いと評価されます。
- 例:BEI=0.8は、基準値の80%のエネルギー消費で済むことを意味します。
GX志向型住宅では、このBEIを低く抑えることで、エネルギー効率の高い住宅であることを証明します。
グリーントランスフォーメーション志向型住宅の特徴は?
グリーントランスフォーメーション志向型住宅は、脱炭素社会の実現を目指し、以下の特徴を持ちます。
- 省エネ性能の向上:高断熱仕様によりエネルギー消費を抑制
- 再生可能エネルギーの導入:太陽光発電や地中熱利用でエネルギーを自給自足
- 環境負荷の低減:CO2排出削減の建材利用
- 持続可能な暮らし:光熱費削減や快適な住環境の実現
これらの取り組みにより、GX住宅は未来志向の持続可能な住宅として評価されています。
循環型住宅とはどんな住宅ですか?
循環型住宅とは、建築時から解体後までを視野に入れ、資源を有効活用し続ける住宅です。
- 建材の再利用:再生可能な資材やリサイクル可能な建材を使用
- 長寿命設計:劣化しにくい構造や設備を採用し、建物の耐久性を高める
- 廃棄物の削減:住宅解体時に発生する廃材を最小限に抑える
循環型住宅はGX志向型住宅の一環として、環境負荷の少ない持続可能な社会の実現に寄与します。
パッシブハウスとZEH住宅の違いは何ですか?
パッシブハウスとZEH住宅は、いずれも高い省エネ性能を持ちますが、アプローチが異なります。
- パッシブハウス:自然エネルギー(太陽光や風)を最大限に活用し、機械設備に頼らず快適な室温を保つ住宅。断熱・気密性能が非常に高いのが特徴です。
- ZEH住宅:高効率な設備と再生可能エネルギー(太陽光発電など)を組み合わせ、一次エネルギー消費量の収支をゼロを目指す住宅。
GX志向型住宅では、パッシブデザインの考え方を取り入れつつ、ZEH以上の省エネ性を達成するケースが増えています。
ZEH住宅とは何ですか?基本の特徴と性能について教えてください
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅は、年間の1次エネルギー消費量が実質ゼロになることを目指す住宅です。
特徴:
- 高断熱・高気密:エネルギーロスを最小限に抑える
- 高効率設備:ヒートポンプやエコキュートなどを採用し、省エネを実現
- 再生可能エネルギー:太陽光発電や蓄電池を導入し、エネルギーを自給自足