北海道の住宅で必要な断熱とは?注文住宅で叶える高断熱の快適な暮らし
北海道の住宅で必要な断熱とは、付加断熱による断熱等級6以上です。北海道の新築住宅では、過半数が付加断熱と断熱等級6を採用していることから、北海道における標準レベルであると言えます。更に、暖房設備に合わせて床断熱か基礎断熱を選択することで上下の温度差を少なくし快適性を上げることができます。
今回は、北海道の住宅で必要な断熱について徹底解説してきます。
目次
断熱の種類とは?
住宅における断熱の種類とは、「外壁の断熱」「天井・屋根断熱」「床・基礎断熱」の3つです。外壁の断熱は必ず行いますが、天井と屋根はどちらか片方、床と基礎もどちらか片方を選んで断熱します。また、外壁の断熱には3つの工法があり、「充填断熱(内断熱)」「外張り断熱(外断熱)」「付加断熱(ダブル断熱)」のいずれかを選択します。
どの住宅でも各所に断熱施工しますが、地域によってその傾向には特徴があります。住宅の省エネルギー設計と施工2023(国土交通省資料)によると、北海道の木造住宅における割合は、付加断熱が66%、充填断熱のみが30%、外張り断熱のみは4%です。天井・屋根断熱では天井断熱70%・屋根断熱30%、床・基礎の断熱では床断熱66%、基礎断熱34%(うち両面基礎断熱は8.6%)になります。
北海道の断熱について考える際のポイントは、「外壁の断熱の工法は何か」「天井・屋根のどちらの断熱か」「床と基礎どちらの断熱か」を知る必要があり、それぞれの特徴やメリット・デメリットも知った上で判断することです。
外壁の断熱について
外壁の断熱の工法は、「充填断熱(内断熱)」「外張り断熱(外断熱)」「付加断熱(ダブル断熱)」の3つです。充填断熱は柱などの構造材の間に断熱材を入れ、外張り断熱は柱の外側に断熱材を設置し、付加断熱はその両方を行うものです。
充填断熱(内断熱)
充填断熱のメリットは、外張り断熱に比べてコストが安く、凹凸のある間取りでも施工しやすく、断熱材も繊維系・発砲プラスチック系など選んで使用することができます。デメリットは、断熱材が柱の太さまでの厚みしか入らないため、柱を太くしなければ断熱効果を高めることはできないことです。
外張り断熱(外断熱)
外張り断熱のメリットは、充填断熱に比べて断熱効果を高めやすく、気密性にも優れている点です。一方デメリットは、充填断熱よりもコストが高く、外壁が厚くなるため複雑な間取りでは施工が難しく、狭小地には向かない場合があります。
付加断熱(ダブル断熱)
付加断熱のメリットは、1番高い断熱性と気密性を持つことです。デメリットは、1番コストが掛かり、適切に施工するための技術が必要になることです。
北海道の新築住宅では66%が付加断熱であることから、付加断熱ではない住宅は断熱性能が低い可能性があると考えてよいでしょう。また、年々付加断熱の割合が高まっていることから、北海道における断熱の基本になり得るため、選ぶ際は付加断熱がおすすめです。
天井と屋根の断熱について
基本的に、天井と屋根の断熱はどちらか一方にしか行いません。北海道の住宅は高気密・高断熱が多く、室内を高気密空間にし、室外に空気層を設けて湿気を溜めないことで結露対策を行います。天井と屋根の両方を断熱施工すると、小屋裏は高気密空間となり、空気が外に排出されず結露が発生する可能性があります。
どれだけ室内を高気密にしても、隙間から水蒸気が漏れ出すことがあります。それでも、通気層など空気の通り道があれば左の図のように湿気を溜めることはありません。一方で、天井と屋根の断熱を行い小屋裏が高気密になると、右の図のように水蒸気が外に排出されにくくなります。但し、バルコニー等の関係で一部を天井断熱、一部を屋根断熱にするなど変わる場合もあります。
天井断熱
天井断熱とは、天井部分に断熱材を設置する断熱方法です。メリットとしては、屋根断熱に比べて施工面積が少なくコストを抑えられ、冷暖房の対象面積も少ないためエネルギー消費を抑えられることです。デメリットは、小屋裏の活用が難しいため、ロフトや小屋裏を活用した間取りには不向きであることです。
屋根断熱
屋根断熱とは、屋根部分に断熱材を設置する断熱方法です。メリットとしては、小屋裏やロフトなど空間利用に自由度が増すことです。デメリットは、施工コストが高くなり、冷暖房面積も増えるためランニングコストも増加します。
小屋裏の活用やロフトをつくりたい場合には屋根断熱、特にそのような予定がない場合は施工コストが抑えられて、冷暖房面積が少ない天井断熱を選ぶと良いでしょう。
床と基礎の断熱について
床と基礎の断熱も天井・屋根の断熱と同じように、どちらか一方にのみ断熱施工をします。
床断熱
床断熱とは、フローリングなどの床材と床下空間の間に断熱材を設置する工法です。メリットは、床下に外気を取り入れることで常に空気を循環させることができ、湿気を抑えることができます。デメリットは、断熱材の厚みは床下空間と同じであるため断熱性能を高めるのに限界があり、気密性も低く外気の影響を受けやすい点です。
基礎断熱
基礎断熱とは、基礎部分に断熱施工することです。基礎断熱は内部(建物側)もしくは外部(外側)に施工する方法と、内外部どちらも断熱する両面断熱があります。北海道の場合、外部に施工する方法と両面施工が多いです。
基礎断熱のメリットは、床下を室内と同程度の温湿度にすることができ、床下を利用した暖房設備を使用することができます。デメリットは、床下に空気が溜まりやすくなるため、適切な換気が行われないと結露の原因になることです。
最近普及し始めている全館空調と基礎断熱の相性はよく、デメリットである換気不足の対策にもなります。暖房設備を床下に設置する場合や全館空調のように床下の空気を循環させる場合は基礎断熱が必須と言えます。床断熱と基礎断熱のどちらが良いかは、使用する暖房設備によっても変わります。
断熱材の選び方
各社は、工法や商品コンセプト、冷暖房設備など様々な要素を考慮した上で断熱材や断熱工法を決めています。また、断熱材の種類や商品は多岐に渡り、工法も含めてどのような組み合わせが良いか建築主が判断することは難しいことも考えると、具体的に断熱材を指定することは現実的ではないと考えた方が良いでしょう。
それでは、どのように断熱を選べば良いかという話になりますが、断熱性能を全国共通のルールで比較できる住宅性能表示制度が存在します。
住宅性能表示制度を参考に
住宅性能表示制度とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく制度で、住宅性能に関して共通ルール(評価方法の基準と表示方法)を設け、消費者が住宅性能を比較し易くするものです。住宅性能表示制度により、異なる断熱材・断熱工法であっても、断熱性能を簡単に比較することが可能になります。
断熱等級
断熱性能は等級で示すことになっており、数値が高いほど高性能であることを意味します。
等級7:2050年までの長期誘導目標(UA値0.20)
等級6:当面の目標数値(UA値0.28)
等級5:ZEH水準(UA値0.40)
等級4:省エネ基準(UA値0.46)
※等級3以下は2025年から廃止、等級4は2030年までに廃止されます。
※国土交通省資料より
北海道の場合、1か2のどちらかの地域区分となっており、主にUA値(外皮平均熱貫流率=室内と外の気温差1℃あたりどれくらいの熱が室内から外に逃げるかを示すもの)によって等級が決まります。
断熱のイメージ
札幌(2地域)における各等級の断熱イメージは下記になります。
※国土交通省資料より
例えば、断熱等級4と5では、窓を複層(2枚)からトリプルガラスに変更し、床の断熱を24Kから36Kと密度の濃い断熱材に変更しています。更に、等級5から6では、外壁の断熱を充填断熱(内断熱)から付加断熱(ダブル断熱)に変更し、床の断熱も増やし、天井の断熱は密度を低くしながらも断熱材は厚くしています。
北海道で多い断熱とは?
北海道の新築住宅で多い断熱は、断熱等級5以上です。工法では、外壁の断熱は付加断熱が66%、天井断熱が70%、床断熱が66%を占めており、断熱等級は等級5以上が約75%、等級6以上が約53%であることが、住宅着工統計や住宅性能評価・表示協会、住宅の省エネルギー設計と施工2023(国土交通省資料)から判明しています。
北海道で選ぶべき断熱とは?
北海道で選ぶべき断熱とは、付加断熱による断熱等級6以上です。北海道の新築住宅では、過半数が付加断熱と断熱等級6を採用していることから、北海道における標準レベルであると言えます。
断熱等級はあくまで建物全体の断熱性能を示したものになります。そのため、外壁の断熱ばかり良くしても、床や基礎の断熱が不十分な場合、足元が冷えて感じるだけではなくエネルギー消費も大きくなり、光熱費が高くなってしまうこともあるため注意が必要です。
等級7は製品等の技術革新を促すために設定された高い数値目標であり、現時点で達成するにはコストの大幅な上昇や間取り、窓の数やサイズなど各種制限が前提となっています。2019年に実施された札幌版次世代住宅に関する調査では等級4と等級6の建築コストの差は坪単価4万円となっており、補助金や住宅ローン控除、断熱性能向上による光熱費の軽減額などを考えると、一般的な広さの住宅であれば坪単価4万円を掛けても等級6を取得した方が金銭的にお得になる可能性が非常に高く、更に快適に過ごすことが可能となります。
耐震性にも注意
断熱性能を高める場合、耐震性能にも注意する必要があります。断熱性能の向上は、同時に断熱材を厚くしたり量を多く設置することを意味するため、建物全体の重量が増えることになります。重量が増えると、柱や梁、基礎などに掛かる負担も大きくなり、その分耐震性に問題がないか確認する必要があります。
耐震性能を確認するために構造に関する計算を行いますが、その計算方法にはいくつかあります。
壁量計算
壁量計算とは、建物にかかる地震力や風圧力に対して必要な耐力壁の量を計算し、その量を満たしているかどうかを確認するものです。壁量計算は仕様規定とも呼ばれ、木造2階建て以下の住宅のみ利用できる簡易計算であり、最低限満たすべき性能のため耐震等級は1になります。
性能表示計算
性能表示計算とは、壁量計算に加えて「床・屋根倍率の確認」と「床倍率に応じた横架材接合部の倍率」を検証する計算方法です。この計算方法によって耐震等級2と3を取得することが可能ですが、簡易計算であり構造計算とは異なります。
許容応力度計算
許容応力度計算とは、柱や梁、基礎など全ての部材が許容できる応力(地震や台風などに対して耐えられる負荷)を検証する計算方法です。この計算方法によって耐震等級2と3を取得することが可能で、一般的に構造計算と呼ばれるものです。
可能であれば、しっかりと許容応力度計算を行い、等級2以上を取得した方が良いでしょう。
よくある質問
断熱材とは?
断熱材とは、建物内部の熱を外部へ逃がさず、外部の熱を内部に伝えにくくするために使用される材料です。これにより、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住環境を保ちやすくなります。断熱材は、住宅のエネルギー効率を向上させ、暖房や冷房にかかるコストを削減する役割も果たします。
北海道の断熱基準は?
北海道の断熱基準は、付加断熱による断熱等級6です。北海道の新築住宅では、過半数が付加断熱と断熱等級6を採用していることから、北海道における断熱基準であると言えます。
なぜ北海道の家は暖かいのですか?
北海道の家が暖かい理由は、寒冷地の厳しい気候に対応するために、高断熱・高気密の設計が採用されているためです。また、断熱性能に関する最低基準が最も厳しい地域であることも高断熱・高気密を後押ししています。
断熱等級6のUA値は北海道でどのくらいですか?
北海道における断熱等級6のUA値は、0.28です。北海道は、地域によって1地域と2地域に分類されますが、どちらもUA値の基準は同じです。
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