【2024年度版】北海道の光熱費について
以前から住宅の光熱費について色々とお伝えしてきましたが、新年度となり新しい発表などもあり状況は少し変化していきています。
そこで今回は、「北海道における光熱費(2024年度版)」についてお伝えしていきます!
目次
1.電気・ガス・灯油の価格
2024年度の各エネルギー価格の予想はこちらです!
ご存知の通り、日本のエネルギー自給率は10%台と低く大半を輸入に頼っており、為替や諸外国の動向によってその価格は大きく左右されます。現在、歴史的な円価格の下落と諸外国の情勢によって上記のように予想されます。
2.2024年度の主なポイント
今年のエネルギー価格に関わる大きな動きは下記になります!
ウクライナ情勢によるエネルギー問題が一旦落ち着きを見せた2023年ですが、今年は様々な変化があり状況次第で光熱費が大幅に上がることが予想されます。特に「ガス・灯油」については大幅な上昇に繋がる出来事もあります。また、政府による電気・ガス等に対する補助金も6月以降はなくなる予定となっており、光熱費の上昇は避けられない状況です。
◇主なポイント
・気候
昨年から今年の春まで続いているエルニーニョ現象(ある海域の平均海面水温が0.5度以上高い状態が6か月以上続くと見込まれること)によって今年の夏も暑くなる可能性が高く、また夏頃からラニーニャ現象(エルニーニョ現象の反対で0.5度以上低い状態が6か月以上続くと見込まれること)が発生する可能性もあり、冬は平年よりも寒くなる可能性があります。夏は暑く、冬は寒くなる可能性があるため平年よりもエネルギーを消費し光熱費が高くなると予想されます。また、世界的に昨年は暑く暖冬でしたが今年はそれよりも寒くなる可能性もあり、昨年以上に暖房に使う化石燃料(ガスや灯油)の需要が世界的に高まると思われ、化石燃料の価格高騰に繋がるかもしれません。
・世界情勢
ウクライナ情勢は未だ収束しておらず、中東ではパレスチナ問題から近隣諸国も巻き込む事態となっています。ロシアと中東は天然ガスや原油の大きな産出国であり、情勢が悪化すると産油・輸出への影響や懸念から各エネルギー価格の高騰を招き、既にその影響が出始めています。
・景気動向
アメリカの金融政策によって円相場に影響を与えます。基本的には金利引き下げを発表すると円高になり、現在のように金利が高い状態だと円安になります。円安の場合、輸入物の価格は高くなるため化石燃料の価格も高騰します。また、中国の景気が回復に進むと化石燃料の需要が高まるため化石燃料の価格高騰に繋がります。
主なポイントについて記載しましたが、どのように変化していくのか予想するのは非常に難しい状況です。例えば昨年の気候ですが、本来エルニーニョ現象では冷夏となるのですが予想に反するどころか史上最も暑い夏になり、正のインド洋ダイポールモード現象が冷夏傾向を打ち消したのではないかとのことでした。傾向が読み取りやすい気候でさえも予想に反する動きを見せている上、今年は「世界情勢」「景気動向」のように各国の思惑なども大きく絡むことから、当初の予想とは反する動きを見せることも十分考えられます。
とは言っても予想することは重要なため、現時点でわかっている情報をもとに各エネルギーの動向を予想していきます!
3.各エネルギーの動向
◇電気
・再エネ賦課金
再エネ賦課金が値上がりし2022年の価格と同程度に戻ります。
再エネ賦課金は電気使用量1kWhあたりに掛かる費用で、電気の利用者は毎月電気料金と一緒に支払っています。賦課金の額は「FIT(再生可能エネルギーによって発電された電気を電気事業者が一定期間、固定価格で買い取ることを国が保証する制度)」が影響しており、基本的に固定価格で買い取った電気は取引所で売りますが、売る金額は買取価格よりも低くなるため、賦課金を交付することで差額を穴埋めすることになります。
本来であれば、買取金額が高いときの保証が終了し始める2030年頃をピークに下がり始める予定でしたが、ウクライナ情勢でエネルギー価格が高騰したので、取引所で売買される電気の価格も高騰し賦課金による補填が少なく済んだ結果、2023年の賦課金が一気に下がりました。そのため、今回の値上がりは予定通りと言えば予定通りとなります。
・燃料価格の高騰
再エネ賦課金よりも懸念すべきは燃料価格の高騰です。2022年に電気代が高くなったことを覚えている人も多いと思いますが、その原因は主に電気をつくっている燃料価格(主に石炭・石油・天然ガス)にありました。北海道電力の2022年度の電源構成(電気をつくるエネルギーや方法)は、石炭が最も多く34%、次に石油14%、取引所10%、天然ガスとFIT買取電気が8%と続き、発電の半数以上は化石燃料に頼っていることになります。
石炭については2022年のピーク時と比べて平均価格が半分以下で、今年も引き続き低価格で推移すると見られており2022年と比べて電気料金を下げている大きな要因の一つになっています。一方で、原油(石油)・天然ガスの価格は一時期と比べると下がってきていますが、天然ガスの価格は昨年11月から上がり続けており、更に原油も上がると予想されているため、この値上がり幅次第で電気料金にも影響があると見られます。
◇都市ガス
天然ガスを液化冷却したものをLNG(液化天然ガス)と呼び、LNGから都市ガスは作られます。LNGの価格変動は都市ガスの価格に影響を与え、LNGの価格変動はウクライナ情勢によって大きく影響を受けます。あまり報じられていませんが、ガスの値上がりはかなりのペースで進んでいます。
①EUの天然ガス需要
EUの天然ガス需要はとても高く、2021年の輸入量は世界1位で、2位中国・3位日本・4位アメリカの数字を足してもEUの輸入量には及びません。ウクライナ侵攻までは半数以上をロシアから輸入していましたが侵攻により状況は一変しました。
②エネルギーの脱ロシア化
EUはロシアに対する制裁として、2027年までにロシア産の化石燃料の排除を掲げました。その結果、天然ガスの価格が急騰し消費者物価指数はとてつもなく上昇しました。天然ガスの需要は高い一方、制裁として脱ロシア化を進めなくてはいけないことから天然ガスの輸入は削減していますが、なぜかLNGは制裁対象とはせず輸入を大幅に増やしています。
③世界で加熱するLNG競争
EUとしてはLNGの輸入を止めると天然ガスの価格が上がり再び消費者物価指数が上昇します。現在も輸入禁止の予定はないとしており、LNGの輸入競争は激化していきます。また、需要はEU圏の冬の気温により大きく変わり、昨年度の記録的な暖冬から厳冬になればさらに需要が増加すると思われます。
④中国の景気回復
中国の景気後退により一時的に天然ガスの需要が低下しましたが、製造業のPMI(景気感を表す指数の一つ)が予想に反し回復傾向を見せ、回復が進んだ場合は上記に加えて更にガスの需要が増します。
⑤日本はLNGを輸入
天然ガスの輸入方法には、パイプライン(気体で送る方法)とLNG輸送(液体で輸送する方法)の2つがあります。日本は地理などの問題から、LNG輸送にせざるを得ない状況のためLNG価格の上昇を直接受けます。EUは天然ガスからLNGへ転換、中国のガス需要増加の懸念など輸入競争が起きるなか、さらに歴史的な円安水準により急激な価格上昇に繋がっています。
◇プロパンガス
プロパンガスは、主に原油の精製過程や油田や天然ガスから分離して回収しています。
日本のプロパンガス消費量のうち80%近くは輸入に頼っており、そのうち約90%(2019年度)はアメリカと中東から輸入しています。
原油や天然ガスの価格上昇でプロパンガスの原料そのものが高騰し、更に円安と物流コストの上昇から都市ガス同様に価格は上昇するでしょう。
◇灯油
・OPECプラスの減産
OPECプラス(石油輸出機構加盟国と非加盟の主要な産油国)は世界全体の産油のうち約50%を占めており、石油価格の安定化を図るための枠組みとして機能しています。OPECプラスは石油価格を押し上げるために石油減産を発表しており、予定では6月末までとしていますが昨年から延長が続いているため価格が上がらなければ引き続き減産する可能性も考えられます。他にも下記によって価格に影響するものと思われます。
・ロシアの製油所攻撃
昨年からウクライナがロシアにある製油所を攻撃しています。ロシアは原油の生産量が世界第3位、石油の輸出額は第2位(2022年)となっており、攻撃により製油所の機能低下が続いた場合は原油価格の高騰が避けられない状況となります。ロシアは攻撃による影響から既にガソリンの輸出禁止を発表し、ウクライナは今後も攻撃を継続する考えを示していることから影響は広がっていくと思われます。
・中東情勢の激化
パレスチナを巡り中東情勢の激化が懸念されています。またイスラエルとパレスチナだけでなく、フーシ派による商船の攻撃、シリアやイランなど近隣諸国との情勢悪化が表面化する事態となっています。このような地政学的リスク(特定の地域が抱える政治的・軍事的な緊張の高まりが世界経済に悪影響を与えること)では、原油価格の高騰を招くことになります。
4.今後使うべきエネルギーとその理由
「電気一択」と言えるくらい、今後は電気を使用した方が良いでしょう。
理由①国内生産可能
ここ数年の光熱費上昇で、日本のエネルギー価格は世界情勢に大きく影響を受けることが明らかになりました。世界情勢の影響を避けるためには安定供給可能なエネルギーを国内生産する必要がありますが、日本国内で生産可能で安定供給できるのは「電気」だけです。現在日本では再生可能エネルギーによる発電を推進しており、事業者だけでなく家庭向けの発電設備も開発を進めています。実は日本発の技術も多く、数年内に商品化される予定の物もあります。今後より一層再エネ設備や再エネによる発電を増やす予定で、より安価で安定的に使用される可能性が電気にはあります。
理由②パリ協定の存在
地球温暖化対策として歴史上初めて全ての国が合意した「パリ協定」が存在し、温室効果ガスの排出を抑えるための目標と具体的な対策を各国が設定して取り組んでいます。この取り組みの大きな点は、温室効果ガスを排出する企業や(間接的に)個人に対して課税や負担を生じさせる仕組みがあることです。例えば、2028年頃から化石燃料の輸入業者等に対し排出量に応じて課税される予定ですが、課税分は価格に転嫁されるので間接的に個人負担が増えます。また2026年頃からは特定の企業ごとに排出量の上限が設けられ、上限を超えた場合は超えた分の排出枠を購入する必要があるので、こちらも同様に間接的に個人負担が増えます。
そのため、化石燃料(ガスや灯油など)を使用する家庭ほど負担が大きくなります。
※パリ協定では産業革命前と比べて地球の平均気温の上昇を2℃未満(努力目標1.5℃以下)までに抑えることを目指していましたが、昨年の発表では温室効果ガスの削減量が達成されずこのペースでは温暖化が目標まで抑えられないとしています。このまま温暖化が進むと2100年までに下記のようになると予想されています。
理由③エネルギー転換
パリ協定を受けて先進国を中心に2050年までにカーボンニュートラル(CO2排出量を実質ゼロにすること)を目標にしており、家庭で使うガスや灯油は新しいエネルギーに転換する方針となっています。
例えば都市ガスの場合、都市ガスから合成メタン(水素とCO2から都市ガス原料の主成分となるメタンを合成したもの)へのエネルギー転換を目指していますが、大きな課題をいくつも抱えています。
・(都市ガス)需要の1%を創り出すための投資規模で約6,600億円が必要
・安価なグリーン電力(自然エネルギーで発電された電力)が必要
・安価なグリーン水素(グリーン電力で水から分解した水素)が必要
・CO2は化石燃料の燃焼によって排出されたものを想定
1%の供給だけでも大規模な投資が必要であることに加え、低コストで供給するためには安い水素、もしくは安価な電力と水、CO2が必要となります。合成メタンが安価で供給できる状況下では、グリーン電力コストはそれ以上に安いことを意味するため、都市ガスが合成メタンに変わっても電気を使う方がお得とされています。また、合成メタンや水素を国外で生産し輸入することも検討されており海外情勢の影響を受ける可能性があること、化石燃料の燃焼によるCO2の使用に関するルール整備(日本だけでなく他国とも整備)が必要など課題が山積みです。
他にもプロパンガスはバイオガス、灯油はバイオ燃料などの転換を目指していますが、現在の設備機器は使用できないことや新しい供給方法の構築、何よりここでも安価な電力が必要となります。エネルギー転換には安価な電力確保が必要なため、結果的に電気を使う方が家庭の光熱費は安くなるのではと見られています。
5.光熱費を抑える住宅とは
光熱費を抑えるためには「低コストのエネルギーを使いつつ、消費量を抑えること」が重要で、「スマート電化と全館空調の組み合わせ」が注目を浴びています。
◇スマート電化
スマート電化とは「冷暖房と給湯にヒートポンプ機器を、キッチンにIHを使う新しいオール電化のカタチ」です。ヒートポンプ機器とはエアコンや冷蔵庫のように空気中の熱を集めて移動させる技術を用いた機器で、小さなエネルギーで大きな効果を生み出します。光熱費が高いと言われているのは従来のオール電化で、給湯や冷暖房にヒートポンプ機器を搭載していないことが多くあります。
◇全館空調
全館空調とは住宅全体を快適な空気に調整することで、多くの全館空調システムでは一つの設備で24時間家中を冷暖房します。そのため、家の中で温度差が少なく年中快適な上、冷暖房に使うエネルギー消費は抑えることができます。
この2つを組み合わせることで光熱費を抑えることが可能になります。
北海道の冬は寒く、一方で近年はエアコンが必須と言えるくらい暑くなっています。エネルギー消費の多い北海道だからこそ、効率的に使っていくことが重要です。
今後益々エネルギーに関する問題が深刻化していきますので、住宅選びも価格やデザインだけではなく、光熱費のことも考えながら検討していく必要があります。
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